政治/経済分野

2009年4月25日 (土)

本日の「怒」090422/「エコ」に買い替えるのは「エコ」ですか?


 15兆円の経済対策が決まりました。内容はこれまで言われてきたものを無原則に積み上げただけで、誰でも作れる代物です。こんな内容で胸を張るとは、麻生首相、政治家に政策立案能力がないことを天下に宣言しているのと同じだということがわからないのでしょうか。

 経済対策の内容そのものについては、今日のテーマではありません。突っ込みどころ満載で、それはそれで「怒」なのですが、今日はその目玉とも言うべき「買い替え促進のための補助」について書いてみます。

 いかにも人気取り、という感じですが、自動車やエコ家電の買い替えに対して補助がでることになりそうです。自動車についてはそのバカバカしさがあちこちで書かれています。13年も我慢せざるを得ない人が補助が出て買い替えるのかどうか、誰でも想像がつくでしょう。経済対策としてもほとんど意味をなしませんね。

 一週間ほど前ののニュースで、「エコ家電の買い替えは本当にお得か」という話がでていました。話の主旨のひとつは、「メーカー発表のデータはある一定の条件の下で行なわれたテストの結果なので、そのまま家庭では当てはまらない」というものでしたが、「お得かどうか」ということではなく、「環境に良いのかどうか」でも考える必要があるのではないかと思います。

「家の冷蔵庫、もう買ってから5年もたってる。最新型にすれば消費電力も減るし、エコだわ。買い替えの補助も出るからお得。買い替えましょ」ちょっと待って下さい。本当に「エコ」ですか?

 ある自動車メーカーの技術者が、「プリウスですら、他の車と比べて環境負荷が低いとは簡単には言えない。特に触媒の開発・製造などにかかっている環境負荷はかなり高く、製造段階での比較を抜きにしたエコカー論議はナンセンス」と言っていましたが、使い方によっては消費電力「すら」それほど減らない「エコ」家電へのやたらな買い替えは、環境に優しいことだとはとても思えません。

 ガソリン税の時には「環境対策に反する」と言っていた自民党と公明党。景気対策ならマイカー1000円ではなく、トラックの料金を下げるべき。流通コストの削減はダイレクトに消費につながります。ガソリンをどんどん使え、それもレジャーに。新しい家電をどんどん買え。これが目玉ですから、日本の政治家のダメさ加減を象徴しています。

2009年4月 7日 (火)

本日の「怒」090406/ほら出た、懐柔策と目くらまし


 政府・与党が国轄公共事業について、地方公共団体への1兆円の補助を検討している、という報道がありました。景気対策の一環だそうですが、目的は明白です。人気の高い橋本大阪府知事が盛んに主張している「国は地方に説明なしに金だけをふんだくっている」という不満を押さえるための懐柔策であることは明白です。

 これは、二つの点で政府・与党にメリットがあります。ひとつは、高まっている地方の不満(権限や財源の地方移譲が全く進まないのに、国が管轄する公共事業の負担だけはなくならないこと)を直接的に押さえることができるということです。しかし、「地方に負担させる」はずのお金を国が補助するということは、なんということはない、その公共事業を国が直接負担して行なうこととなんら変わりはなくなります。

 これが二つ目のメリットです。即ち、国交省主導の公共事業を温存できるからです。地方の声を聞いたふりをして(微々たる数のダムなどを「再検討」・・中止ではない・・ことで地方の声を反映させたことにして、国の公共事業自体はこれまで通り続けられる、そうした手段を得ることになるからです。

 自民党が政権を長らえて来られたひとつの要因に、「不満が出ればどちらも黙らせる策を高じるヌエのような柔軟性」があります。自民党と官僚が主導したこの手法によって、自民党は「要求すればやってくれる政党」として、各種の利権や利益団体に対して力を発揮してきました。その結果が、何百兆円にものぼる無駄な事業や利権構造をはびこらせて来たのです。こうした「懐柔と目くらまし」がいまだに効果を発揮しています。民主党の「自爆」とこの「バラマキ」で、麻生自民党が総選挙に「負けない」可能性もできてきました。国民は、また騙されることになるかもしれません・・・

2009年2月17日 (火)

本日の「怒」090217/輸出依存のつけ・・二桁のGDPの落ち込み


 16日に内閣府が発表した08年10月〜12月のGDP速報値が年率換算で12.7%のマイナスになったことを受けて、与謝野経済財政担当相は経済の状況をようやく「戦後最大の危機」と表現しました。どういう蜂に刺されたら戦後最大の危機になるのか、あらためてお伺いしたいところですが、「日本経済は諸外国に比べてたいして悪くない」という認識をお持ちの麻生首相も与謝野大臣も、なぜこんなに認識が甘いのでしょうか。

 同時期のGDPの下落率を比べてみましょう(%、もちろん、全部マイナス)。

アメリカ:3.8
フランス:4.6
イギリス:5.9
ユーロ圏:5.7
ドイツ :8.2
日本 :12.7
韓国 :20.8

 金融危機の「発祥の地」であるアメリカの落ち込みに比べて、日本や韓国の落ち込みが激しいことがわかります。麻生首相によれば、「アメリカに比べて日本経済の打撃は遥かに少ない」のだそうですが、GDPを見る限り、その様子はうかがえませんね。

 麻生首相や与謝野大臣が日本の状況をことさら甘く評価するのは、これまでの自民党の政策が誤っていたという結論に導かれることを恐れているからではないかと思います。他国に比べて日本の状況が悪ければ、それは日本の政策に問題があったことになってしまうからです。しかし、事実はその通りです。

 景気変動の影響だけでなく、日本は独自の政策の失敗によって、経済や社会を暗転させてきました。「戦後最長の好景気」とはやされたここ数年間でも、実際に景気が良くなったのはごく一部の層だけで、社会の多数を構成する労働者や第一次産業の従事者の生活は、まったく向上していなかったのです。

 そのことは、各種の統計がハッキリ物語っています。給与所得者の給与は全く上がらず、雇用形態も非正規雇用に大きくシフトしています。その一方で、負担だけはどんどん上がっているのです。「好景気」を演出した「利益」は、株主と大企業の内部留保、20年前と比べて数百倍に増えた高額所得者の財産に化けました。

 もちろん、自民党が目指して来た政治そのものが、「大企業優遇」「高額所得者優遇」政策ですから、結果として起こったことは「想定の範囲内」なのかもしれません。計算違いは、輸出がここまで落ち込むことを考えていなかったことだけなのかもしれません。

 しかし、今回の危機を「運が悪かった」で片付けてしまうことは許されません。日本がこれまでとってきた「輸出産業優先」の政策を改めない限り、景気の回復は世界中で一番最後になるでしょう。その間に起こることを想像すると、空恐ろしくなります。

 認識が甘い高官だけは、とっとと辞めていただかなくてはなりません。

2009年2月 8日 (日)

本日の「怒」090208/他にやることがあるんじゃない? 薬の販売規制強化


 薬の販売規制が強化されることになりました。ネットなどでは反対の署名運動が盛んに行なわれていましたが、ほぼ「満額回答」。薬害対策には不熱心な厚労省の手早い仕事です。

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薬700種以上ネット販売禁止へ 省令改正
2009年2月6日10時28分 朝日新聞
  
 一般用医薬品(大衆薬)のインターネットを含む通信販売について、厚生労働省は6日、風邪薬や漢方薬などの取り扱いを禁じるため省令を改正した。対象は700種類以上とみられる。改正薬事法とともに、6月から施行される。これまで薬事法に定めがなく、ネットでの販売が広がっていたが、規制されることになる。
 ネット事業者や政府の規制改革会議などは、厚労省方針が明らかになった昨夏から、「消費者の利便性が損なわれる」と規制強化に反対。舛添厚労相は6日の閣議後会見でこうした声にも配慮し、事業者や薬害被害者らも入れた有識者会議の設置を公表。通信販売のあり方や今回の規制で不利益を受ける消費者への対応も検討していくという。
 舛添厚労相は「会議で精力的に議論して、この省令で不備があれば変えればいい」とし、検討結果によっては、改正省令を再び見直す可能性にも言及した。
 改正薬事法では、大衆薬を3段階に分類。省令改正では、このうち、副作用リスクが高い第1類と第2類について、ネットや電話注文などでの販売を禁止。薬剤師らによる店頭での対面販売を原則とする。1、2類合計で700種類以上が対象になるとみられる。リスクが比較的低い整腸薬など第3類は通信販売を認める。
 日本オンラインドラッグ協会によると、04年の医薬品のネット市場は約61億円、通信販売全体では約260億円という。規制強化にはネット事業者らが反対する一方、薬害被害者団体や消費者団体などは規制強化を支持し、賛否が分かれている。(立松真文)
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 この問題、「ネット販売禁止」というフレーズが一人歩きしていますが、内容は「対面販売を義務づける」というものです。そのために、古くから漢方薬などを生産者から電話などで注文している人たちの影響は非常に深刻です。数から言えば、ネット販売が多いのですが、必要度から言えばこういった「特別な薬」を使っている人たちのことを一顧だにしない改正には反対です。

 それより、この改正が「消費者や被害者団体のことを考えている」というポーズのために行なわれたように思えてなりません。私がそのように感じるのは、自分の経験があるからです。

 昨年のことですが、ある日の夕方、家の近所にある大手ドラッグストアに薬を買いに行きました。そこでは調剤は行なっていませんが、もちろん薬剤師の対面販売が現在でも義務づけられている薬も販売しています。私も、そのなかのある薬のことを相談しようと思ってそこにいきました。レジで「薬剤師さんにおたずねしたいことがあるのですが」と声をかけました。「はい、私がお伺い致します」と、50代とおぼしき店員さんが対応したのです。首から下げた名札には「店長」と書いてありました。「あの、薬の相談ですので、薬剤師さんにお願いしたいのですが」とくりかえすと、「あ、私でもわかりますので」。

「薬剤師さんはいらっしゃらないんですか?」
「ですから、私も薬の販売をしておりますので承知しております」
「でも、薬剤師さんでないと販売できないはずの薬についてなのですが・・」
「どういったご用件でしょうか?」
「薬剤師さんはいらっしゃらないのですか?」
「あ、今はちょっと外に出ていていません」
「じゃあ、後で来ます。お戻りになるのは何時ですか? 営業は11時までですよね」
「あ、今日は戻って来ないと思います」
「え? じゃあ、5時間以上薬剤師さんがいない状態なんですか? それは問題じゃないの?」
「いえ。私も把握していますので、問題はありません。」
「そうなんですか・・・じゃあ、他に行きます」

 この話を友人にしたら、彼も同じような経験をしたことが何回もあるそうです。もちろん、これは薬事法違反。現時点でも、違法状態は野放しです。最大手のドラッグストアの創業者の息子さんが国会議員でした(今は落選中?)が、だから許されるんでしょうか・・・

 どう考えても、順序が違います。

2009年2月 2日 (月)

本日の「怒」090202/「簡保の宿」問題について


 連日のように報道されているので、状況はご存知だと思いますが、日本郵政がオリックスに「払い下げる」予定だった簡保の宿の売却問題が迷走しています。当初、報道は二派に分かれていました。

1)売却が決まった経過が不透明。徹底的に明らかにせよ
2)入札が決まったものを総務相がクレームを付けるのはいかがなものか

 とっている新聞によって(または報道によって)、どちらに重きを置いているかがかなり異なります。表面的に論じられている問題点を整理してみましょう。

1)オリックスへの売却が果たして公正と言えるか
2)売却価格は適当か
3)赤字を垂れ流している施設の売却を急がなくてもよいのか
4)総務相が決定に横やりを入れるのはどうなのか

 文句を付けた総務大臣が、あれこれと問題の多い鳩山氏であるところがミソです。はたしてこの「いちゃもん」、どちらに理があるのでしょうか。キーワードは、「郵政民営化反対派」です。

 簡保の宿は赤字のものが多いのですが、実は、旧郵政の膨大な天下りと利権を抱えています。宿の整備や食材などの購入先は、ほとんどが任意で契約されたファミリー企業なのです。オリックスへの売却は、こうした利権構造を失うことになるのです。小泉政権のデタラメが徐々に国民に認識されつつありますが、民営化がこうした利権構造を破壊できるのであれば、少しの「理」はあるでしょう。鳩山総務大臣がクレームをつけた背景に、現在の利権構造を維持したい連中の意向が働いている事は間違いありません。

 一方のオリックスは、資産価値をろくに評価せずに落札できたうまみは失いたくないでしょう。実際の施設だけでなく、維持するためには裾野に大きな仕事がころがっているのですから、新たな利権を獲得できるわけです。雇用の維持も2年の期限付き。その後は、ぜーんぶ自分の思うままにできるのです。政府のさまざまな諮問機関に首を突っ込んでいたオリックスの宮内氏ですが、こんな美味しい話を自分のものにしていたとは、さすがです。

 ここしばらく、竹中平蔵氏と論争を繰り広げている鳩山氏ですが、まさに「新旧の利権の闘い」そのままなのです。そういう本質がわかっていないと、判断を間違ってしまいます。

2008年12月10日 (水)

本日の「怒」081209/本当に農林中金には公的資金を入れないのか?


 今日の参議院の財政金融委員会で、与野党が金融機能強化法(主に地方銀行を対象に公的資金を投入するための改正)についての採決日程が合意されました。これで、野党側の修正案が参議院で可決され、その後衆議院で与党側の修正案が再可決されて法案成立となります。与野党ともに、かなりの数の地方金融機関に対して、資本増強のための公的資金を投入することの必要性は認めていましたが、争点は、石原銀行と農林中金の問題でした。

 自民党、特に農林族にとってこの法案のひとつの目的が農林中金の救済にあったのはどうやら明らかなようですが、その経営のあまりのずさんぶりや役員報酬の未公表などの理由で、民主党を始めとする野党側はこの点を問題視していました。この問題については先月に比較的詳しく書きましたが、その後、石原東京都知事は公的資金を申請しないことを表明、農林中金も1兆円の増資で乗り切ると発表しています。どちらも、公的資金を入れることで経営内容を白日の下に晒されることを回避する作戦に出たと思われます。

 しかし、もともと銀行の呈をなしていなかった石原銀行はともかく、農林中金の欠損は1兆やそこらではありません。4兆以上、8兆とも10兆とも言われる欠損をどのように処理するのか、ただでさえ低い貸し出し比率をさらに下げるようなことになるのか、注視する必要があります。

2008年12月 3日 (水)

本日の「怒」081203/落としどころは公共事業だが・・・


 麻生首相の迷走のひとつ、「地方へ自由に使えるお金1兆円」が、どうやらもともとの地方への道路予算7000億に3000億を追加した1兆円を「公共事業限定」で地方に分配することになりそうです。福田前首相が唱えた「道路関連事業費を生活支援に」という構想はつぶれ、結局のところ地方にとっては自由に使えるお金が増えない(減る?)というお粗末な結果になりました。自民党道路族の強さと麻生首相のいい加減さが改めて浮き彫りになりました。

 問題は、1兆円の使い方/配分方法にあります。どうやらこのお金、国交省が配分を決めることになるようですが、そうなると、今まで繰り返されて来た悪名高き「ひも付き予算」になるでしょう。

 ピンとかない方のために簡単に説明します。国が「地方のために」配分する公共事業予算は、そのほとんどが「国が使途を決める」ものです。代表的な例で言えば、「道路に関係するモノを作るのであれば、総予算のうち7割を国が払います」という交付方法をとります。すると、のこりは地方が負担するか、「起債」して地方が借金として将来につけをまわすのです。こうしておけば、国交省と与党の「予算配分権」が保たれ、官庁にとっては天下り先の仕事の確保、政治家にとっては票と政治資金の確保につながる、という仕組みです。

 地方としては、「その用途で使わなければ国から補助金が出ない」のですから、無理をしてでも指定された事業を行います。こうして作られた「道路に隣接した箱もの」や、訪れる人のいない「博物館」「物産館」などが数多く作られ、結果的に借金と維持費、(将来的には廃墟?)が残されるのです。このようにして投下された無駄(借金や維持費も含めると)は、20年間で30兆とも50兆とも言われます。この期に及んで1兆円くらい増えたところでどうでもよいのかもしれませんが、確実に地方に対して将来の負担を増やすことになるでしょう。

 仮に、この1兆円を全くひも付きではない公共事業に当てられるのであれば、話は違います。学校の耐震化や病院施設の更新、上下水道、バリアフリー化などに使うことができれば、地方の役に立つでしょう。しかし、報道されている議論の中身を見ると、「道路を造ること以外には認めない」という方向に進みそうです。

 こんな大不況の中でも、役人と政治家は損をしない仕組みが維持されるのです。

2008年11月24日 (月)

本日の「怒」081124/交通量見通しの修正・・形だけの修正におわるか


 国交省が、道路整備計画の基となる交通量見通しを修正することになったようです。道路を造り続けるために過大に見積もりを続けて来たデータが、実測値とあまりに乖離してしまったために誤魔化しがきかなくなったことがその理由だと思われますが、改めて、この役所が「何をするために存在して来たのか」を認識させられました。

 交通量は2020年まで増え続ける、と見通されていました。少子高齢化や人口増加の減少への反転は、すでに20年近く前から予想されてきました。実際にその見通しに従って、国民の負担(税金や保険、年金の掛け金など)はどんどん増え続けてきましたし、給付は減らされてきました(年金支給年齢の引き上げ、医療費の自己負担の引き上げ、生活保護などの打ち切り、障害者の自立支援政策の転換など)。ところが、「高齢化が進めば、高齢者のドライバーが増えるから交通量は増える」「過疎化が進めば車に対する需要は増える」などと「へりくつ」をつけて、国交省は交通量が増加し続けると叫び続けてきたのです。もちろん、これは道路を造り続けるためにこじつけた理由で、実態とかけ離れていることがそのことを証明しています。

 さて、今回のこの見直し、実際に道路建設にストップがかかる方向に進むのか、私は懐疑的です。今度は、「地方の活性化のためには交通量を増やさなくてはならない。そのためには、道路の利便性を向上させなければならない」という「主客転倒した」主張や、「高齢者も運転し易いように、道路を広く、明るくしなければならない」という理屈がでてくるような気がしてしまうのです。

2008年11月13日 (木)

今必要な経済対策は/8・・・住宅、少子化対策、雇用保険の問題


1)住宅減税

 政府・与党が検討している住宅関連の対策は、1)過去最大の住宅取得減税、2)バリアフリーなどのリフォームに対する減税、です。これまで最大の住宅取得にかかわる減税は、借入金5000万円、年間控除額600万弱だったのですが、これより大きい額ということになると、借入金6000万円以上に対する減税になるはずです。基本的に、住宅取得に対する減税やリフォームに対する減税は、景気刺激効果も大きく賛成なのですが、やりかたにはやや疑問があります。

 6000万円以上の物件とは、どのようなものでしょう。私が住んでいる文京区でもこのくらいの物件になると、比較的人気がある地域の70平米を超える「ややゴージャスな」作りのものです。直線距離で2Kmほど動くと、同じような仕様の物件でも5000万円を切るものが増えます。もちろん、山手線の外、さらに郊外になれば、もっと安い物件は増えます。よく「年収の5倍」という基準が出てきますが、6000万円を超える物件であれば、年収は1200万以上あることが「普通」になります。もちろん、これは頭金が0の場合ですから、ある程度の頭金を入れれば、購入する物件の限度はもっと高くなるでしょう。こうした層をターゲットにした援助がどのくらい必要なのか、やや疑問に思うのです。(実は、これでも「甘い」試算です。実際に控除の恩恵を受けられるのは、納税額が160万以上の人/最大、ということを加味すると納税額500万を超える人/が、あらたに6000万円以上の借り入れをして物件を購入する場合です)高額物件に対する援助を増やせば、たしかに住宅を供給する側にとっては恩恵が大きいでしょうが、今支援が必要なのは、そうした「高額物件」の購入者ではなく2000万から3000万台のローンを組んでいる人たちなのです。アメリカに比べてはるかにローンを組むことが厳しい日本では、アメリカのような住宅破産は少ないのですが、それでも「ローン破綻予備軍」は100万とも200万とも言われます。住宅価格の不合理な下落を避けるためにも、こうした「破綻」を極力出さないことが急務なのではないでしょうか。新たな需要を創出するのは、それからでも良いのではないかと思います。

 私がこのように考える背景には、今までの以上とも思える「タワーマンションブーム」もあります。多摩ニュータウンの話を以前書きましたが、ウォーターフロント地域に次々に立てられたタワーマンションに住む人たちや、こうしたブームを演出した不動産会社は、30年後、50年後のことを考えているのだろうか、と不思議になります。最近になって、「意外と住み心地が悪い」という評判をちらほらと聞くようになりましたが、基本的な生活をおくるための施設がマンション群の中にあったとしても、ニュータウンが「縦に伸びた」だけであるように感じます。こうした住居に、1億もの値段がついていますが、本当にこのようなマンションがよいのだろうか、という疑問があるのです。

 いずれにせよ、今回の住宅減税で恩恵を受けられるのは、年収が2000万を超えるような人たちが高額な物件を買う場合であり、高額物件を売るディベロッパーなのです。「お金持ちを優遇すると経済が好転して貧乏人も豊かになる」とでもいいたいのでしょうか。

2)少子化対策など

 子育て支援金や妊婦検診の支援は、少しばかり拡充されます。これ自体にはまったく異論がありません。しかし、本来はこうした施策は景気対策ではなく基本的な政策として行なわれるべきでしょう。問題はこれだけではありません。そもそも結婚できない、子どもを作りたくても作れない層の増大をなんとかしなくてはならないのです。さらに、妊婦検診を無料にしても、そもそも産科医がいなくなってしまっている現状をなんとかしないと、不安で子どもを育てるどころではありません。こうした政策は、道路に回す財源を全部使ってでも優先して行なうべきものだと思うのですが・・・一回きりの「景気対策」に終わらないことを祈ります。

3)雇用保険制度の改定

 直接的には今回の景気対策ではないのですが、関連している重要な問題に雇用保険制度の改定があります。雇用保険は、これまでの「好況」の結果、5兆円ほどの積立金が残っています。このために、雇用者や労働者の負担を軽くする方向に改訂が検討されています。被雇用者にとっては年間1万円ほどの負担減に、企業にとってもかなりの負担減につながります。改訂の主旨は、この企業の負担減も労働者の給与に当てて、実際に受け取る給与を増やすことにあります。話としては良さそうなものですが、落とし穴があります。

 まず、5兆円の積立金の意味です。保険料の支払いが減り失業者が増えて保険給付が増えれば、この積立金は当然減少します。未曾有、といわれる不況に突入した今、この積立金がみるみる減っていくことは明らかです。実際に、前回の好況時に積み立てられた4兆円を超える積立金は、その後の不況で数年間で底をつき、保険料率のアップを余儀なくされています。これから失業者が増大することを思うと、この貴重な積み立てに手を付けることは危険です。

 次に、企業が負担減を給与に反映しない可能性が強い、という問題があります。好況時には「いつまでも良いわけではないので労働コストをあげることはできない」といって賃金の引き上げをしぶり、不況になると「雇用を守るためには給与を下げないといけない」といって情け容赦なく賞与をカットする、正規雇用を非正規雇用に置き換える、ということを繰り返して来た大企業が、負担減によって得た資金を給与に回すとは到底思えません。法の穴をくぐり抜けてでも利益を出そうとする会社の代表を恥ずかし気もなく財界の顔に選んでいる企業が、労働者のためにそんなことをするはずがないのです。

 さらに、雇用保険自体に加入していない人たちのことが忘れ去られている、という問題もあります。現在、一番苦しんでいるのは、雇用保険に加入することすらできない労働者です。こうした人たちに対する対策なしにして、雇用の問題は解決しません。加えて言えば、実際に職を失った人たちが雇用保険を有効に利用できない実態があります。会社都合の退職と自己都合の退職では、失業保険の給付が得られるタイミングなどが異なりますが、実際には会社都合であっても形の上で自己都合の退職扱いにされている労働者がとんでもなく多いのです。企業側の責任回避のために、受け入れられない転勤を強要されたり、意に反する配転などによって「やむなく」退職する人たちは多く、実際に失業保険を受けるまでに生活を破綻させてしまう人も少なくないのです。

 セーフティネットを有効に機能させるためには、雇用保険に加入できない労働者に対する制度的な保証(社会保険に対応する国民保険のようなもの)をつくること、実際に使われている制度が骨抜きにならないように運用を改める(やむを得ない事情を考慮できるような運用)必要があるのです。料率をいじるだけが政策ではありません。

2008年11月11日 (火)

今必要な経済対策は/7・・・道路、ガソリン、高速料金・・・トータルな交通行政不在のつけ


 麻生内閣が検討している経済対策では、「地方への1兆円の財源移譲」「高速道路の休日1000円乗り放題」「平日3割引」などが検討されているようですが、この分野について若干の考察を行なってみましょう。

 まず「ガソリン税の地方への1兆円の財源委譲」問題です。一般財源化に伴ってもともと7000億円を地方に移す、という方針は決まっていましたが、その後麻生首相が発言した「1兆円」については、与党内でもドタバタが繰り広げられています。「7000億に1兆円を加えた1兆7000億円」という発言が政府内から出ると、自民党の道路族から「そんなことをしたら道路財源がなくなる」と、さっそく反発の声が上がりました。もともと政府・与党内での調整をして出て来た数字ではなく、麻生首相周辺の「思いつき」なのでしょうか、思惑の違いが露呈してしまいました。

 道路財源を可能な限り地方に移譲することは正しいと思います。縦割り行政で不要な道路を造り続けて来た構造が変化する可能性があるからです。不要な高速道路より、生活道路中心の投資が可能になるかもしれません。これまでの道路や「箱もの」行政は、とりあえず建設分野にお金を落とすために、必要性や採算を全く考えないでものを作ることに邁進してきました。結果として、月に数回しか使われない公民館やホールのたぐいが乱立し、「車よりタヌキが多い」と言われるモダンな道路が作られて来たのです。不必要なものでも、国から補助が出るとなると、地方自治体は無駄なものを次から次へと作ってきました。それが結局財政を不健全にし、地方自治体の首を絞めることにもつながってしまったのです。最近は、地方自治体の財政悪化にともなって、支出に際しても住民の監視意識が強くなっています。「道路を造るなら病院を閉鎖するな」というような切実な意見が生かされる可能性にもつながります。

 高速道路料金については、はっきり言って選挙対策のために何も考えないで作られたデタラメ極まりないものだと言わざるを得ません。民主党の公約である「高速道路の無料化」も、それだけを取り上げるとナンセンスなものになってしまいます。

「休日の1000円走り放題」の目指すものは、一体何なのでしょうか。たくさん走ってもらって排気ガスをたくさん出すこと? 他の交通機関よりも車を使うこと? ガソリンの暫定税率問題の時にはあれほど強調されていた環境問題はどこへいってしまったのでしょうか? 確かに、長距離は走りやすくなるでしょう。家族で移動する時に、新幹線の代わりに車を使う人も出てくるかもしれません。そんなことを「景気対策」のために行なってもいいのでしょうか?「高速道路の利用を促し、観光地を持つ地域経済への経済効果を与えそうだ」(10月31日付産經新聞)と、無批判に礼賛している新聞社もありましたが、本気で書いているのか、と疑ってしまいます。経済状況の悪化は、そんなことぐらいで遊びに行く人が劇的に増えるような甘いものではありません。むしろ「節約のためのシフト」が起こるだけに終わるでしょう。渋滞を起こして環境を悪化させるだけ、という結果になるような気がしてなりません。

 そもそも、日本には総合的な交通行政のビジョンがありませんでした。各省庁の縦割り行政や自治体の権益争いや、族議員と呼ばれる議員による道路や鉄道行政の私物化などにより、鉄道や道路、港湾、空路などがバラバラに進められたからです。そのために、都市部は渋滞と公害に苦しみ、道路と鉄道、空路、航路の関連性を失った交通整備に終始してきました。赤字の空港や港が乱立し、新幹線ができて生活路線が廃止される、といった、生活者無視の行政が続いてきたのです。景気対策と称して、道路だ、新幹線だ、空港だ、と騒いでしまうと、これまでと同じ失敗が繰り返されるでしょう。少子高齢化社会を向かえる今こそ、あるべき交通整備のビジョンを立てることが必要なのです。

 景気対策として考える必要があることは、必要なものには十分に財源を割り当て、不必要なもの/効率が悪いものは極力避けることです。高速道路の使い放題などは、こうした前提とは正反対の政策です。一例を挙げましょう。消費の喚起のためには、物流が滞りなく行なわれることが必要です。荷主のイジメに喘いでいる中小の運送会社のドライバーたちが安心して働くためには、無駄な行楽客や新幹線から車に乗り換えた人たちで渋滞する道路は迷惑です。それよりも、事故を起こしても保険が使えずドライバーの責任になってしまうような労働契約(注)を改めるために財政援助をし、燃料費の高騰が下請けイジメにならないような制度(強制的な燃料サーチャージなど)を導入する方が、はるかにすぐれた経済対策になるはずです。

(注)中小の運送会社のトラックドライバーは、実質的に会社と雇用関係があっても、実際には個人事業者と会社との契約の形になっていることがほとんどです。ドライバーは社会保険や組合保険、厚生年金などの適用を受けることができず、酷い場合には、事故を起こした時に荷物の保証をドライバー自身がしなくてはならないこともあります。こうした状況は、高速道路を使わないことによる一般道の危険の増大、ドライバーの過労などを引き起こしています。

 景気対策としては、ガソリン、軽油にかかる税金も、見直しても良いかもしれません。公共交通機関や物流にかかるものについては税金を引き下げても良いのではないかと思うのです。公共交通機関が仮に安くなれば、利用者のためにもなることは言うまでもありません。これについては、環境に対する負荷を減少させる方向に交通機関の利用が変化する(例えば、長距離トラックが鉄道のコンテナに置き換えられる)ことを阻害しないような対策を同時に実施する必要があるでしょう。

 建設業にたいする支援などについては、必要なものを前倒しできるような対策が望まれます。必要性の低いものを景気対策として無理矢理作るようなことは、極力避けるべきだと考えます。

2008年11月10日 (月)

今必要な経済対策は/6・・・生活再建と低所得者層対策


 政府の追加の経済対策の「目玉」が、定額給付金の交付です。所得に関係なく、夫婦子ども二人のモデル家族で約6万円ほどの給付が受けられる、全体で2兆円をやや上回る規模になりそうです。まずこの給付金と消費支出について考えてみましょう。

 この政策の経済的な効果については、経済の専門家の意見は概ね辛口のようです。理由は「貯蓄にまわる」「借金の返済にまわってしまう」「先の支出を前倒しする効果しかない」というところでしょうか。実例としてあげられるのが、1999年に行なわれた地域振興券の結果でしょう。6000億円ほどの政府支出で99%が使用されたにもかかわらず、経済効果は大きく見ても2000億程度しかないとされました。今回の処置は、前回のように地域限定の商品券だけではなく何種類かのチケットになるようなので、使い勝手はかなり良くなるはずです。また配布対象が納税していないお年寄りや子ども、生活保護所帯などに限られていたのと異なり、今回は全世帯(所得制限を考えているようですが)に対する給付なので、給付されたチケットが使われる範囲が広くなることも予想されます。こうした違いがありながら、専門家は景気拡大効果を限定的なものだと見ているのです。

 定額給付金を行なうことになったのは、前回の地域振興券と同様、公明党の選挙対策です。企業経営者や高額所得者、そして地方の農林水産業に支えられた自民党の支持基盤に対し、中・低所得者層や中小企業経営者が支持基盤である公明党が、支持者に対する実績として自民党に実現を迫って行なわれることになりました。従って、経済効果を考えて打ち出された政策ではなく、財源も「どこでもよいから引っ張ってこい」式に決められました。本来なら国の借金の返済に充てる予定の「埋蔵金」を使うのだそうです。こうした「埋蔵金」の存在を否定して来た政府・与党が見つけた「宝」のようなものなのでしょうね。

 さて、1人1万円強、4人家族で6万円という給付金の意味を考えてみましょう。確かに、ぎりぎりの生活をしている人にとっては、大変ありがたい政策でしょう。インターネット上にたくさんある「経済/家計や借金の相談サイト、掲示板」のたぐいを見ても、とても多くの人たちが、5万、10万、場合によってはさらに小額のお金のことで苦労をしていることがわかります。では実際にこうした「現金の配布」が景気対策にとってどのくらい有効なのでしょうか。それを理解するためには、所得や家族構成による支出(消費支出ではない!)の分析が欠かせません。

 借金や何がしかの延滞を抱えている世帯(単身家庭も含む)なら、こうした臨時収入は返済や延滞の解消に使われるでしょう。こうした使われ方が景気と無関係であるとは言いませんが、消費を喚起する意味はありません。何故かと言うと、このような家庭は構造的に収入と支出のバランスを欠いていることが多いからです。言い方を変えると、「破綻を先送りした」ことにしか繋がりません。ぎりぎりの状態で生活を送っている場合も同様です。何がしかの「消費の先取り」になる可能性は少なくありませんが、このくらいの額では思い切った買い物をすることはできないでしょう。逆に、充分な所得があり余裕がある世帯にとっては、この程度の金額で何か新しい買い物をすることはないように思います。一番消費支出を増やす効果が期待できるのは、この中間の層だと考えられますが(もちろん、「ありがたみ」があるのは、低所得者層です)、今の日本の政策は、こうした「中間層」を破壊し続けているのです。

 消費支出を増やすためには、現実に支出するお金があることと、それを使ってしまえる安心感や信用が必要です。そのためには、一過性の「キャッシュのばらまき」では意味がないのです。

 もうひとつ付け加えなければなりません。長期的に見て消費を向上させるためには、将来の支出増に耐えられる世帯を増やさねばなりません。単身世帯やアパートさえ借りられない層の増大は、家庭を作る/子どもを育てる、という支出のサイクルを破壊します。経済的な理由で結婚できない20、30、40代の著しい増大は、長い目で見た時に、日本の支出構造を大きくゆがめてしまいます。こうした点を考慮することは、企業ベースではできません。利益を上げるために人件費を削らなくてはならない企業は、将来の日本の支出構造には全く興味がないからです。

 私が生活者レヴェル、特に低所得者層に対する景気対策として是非とも必要だと考えていることは、住居の保証です。家を借りることができない、いわゆる「ネット難民」や、潜在的な「難民」である期間労働者などを主な対象に、家賃負担に喘いでいる世帯に対する限定的な保証を含めて行なうことが必要です。現在、全国で700万を超える「空き家、空き部屋」があると言われています。さらに、期間労働者の雇用をやめてしまった(ないしはこれからやめる)ために空いてしまう寮なども利用できるでしょう。こうした家屋を利用して、地方公共団体単位で住居費の保証を行なうのです。突拍子もないアイデアであることは承知ですが、どれほどの財源が必要であるか、ひとつのパターンを考えて荒っぽく計算してみましょう。

 定職がない非正規雇用の単身者で正規の就労意思がある100万人に対して、月3万円、1年限定の補助をするとします。単純に計算すると、3600億円の財源が必要です。空き家を持っているオーナーにとっては、「空いているよりはこのくらいなら安くても良い」という価格を申請してもらいます。もちろん、地域格差がありますから、東京と地方ではメリハリを付ける必要があります。その分を見越して4000億と思っておきましょう。さらに、引っ越しに対する一時金を、必要であれば貸し付けます。トータルして5000億円ほどの財源を見ておきましょう。形式的には、これらはすべて「貸し付け」にします。同時に、職業訓練の充実(これはこれで別に論じてみたいと思います)や新規雇用に対して企業に補助(減税や直接の補助金)などを行ないます。大雑把に、これらの財源に5000億ほど(一人当たり50万円の補助と同じです)を用意しましょう。これでトータル1兆円。

 雇用の場の確保のためには、まず介護・看護といったマンパワーが必要(不足)している分野から手を付けましょう。まず、介護保険の点数などを全面的に見直します。マンパワーの部分に手厚く、器具などは厳しく査定する、などのメリハリを十分につけます。政府が考えている介護保険報酬の3%アップだけにとどまらず、10%ほどのアップを考えてみましょう。3%アップに必要な財源は2100億円(うち、国費550億円)ですから、その三倍が必要となります。国費以外の負担を減らすために、半分の3000億円ほどを国費でまかなうことにしてみます。現状では、利用が少なく事業費用が余っている状態(例えば北海道では150億円ほどの余剰金があります)ですので、報酬をアップして内容を充実させることで利用者も増加するはずです。また、場合によっては、看護学校などに進学するときの奨学金制度(看護の現場で10年働けば返済しなくてもよい、などの特例つき)などを新たに設けてもよいかもしれません。地方の病院での看護士不足を補うための財政援助も同時に行ないます。これらの財源として、年間3000億ほど見積もってみましょう。トータルで6000億円。

 これだけで1兆6000億という巨額の費用が必要ですが、これらは「生きた使い方」になるのです。空き部屋を抱えているオーナーにとっては、十分ではありませんが収入増につながります。1年間、住居の心配をせずに就労に専念できる非正規雇用者のなかには、結婚や子育てができる側にまわれる人が万単位ででてくるでしょう。もちろん、就労した後に入ってくる税金や補助金の返却などを考慮すれば、負担ははるかに減ります。単なる「思いつき」ではありますが、さまざまな条件を考えて練り上げれば、2兆円を一過性の「つかみ金」としてばらまくより、長期にわたって影響を与える政策に仕上げることが可能ではないかと思うのです。そして、こうした「アイデア」は、英知を集めればいくらでも出てくるのではないかと思います。

 日本の現状を考えるとき、本当に必要な生活支援は、これまで30年間の間に壊されてしまった中産層(言い方を変えれば、家庭を持って子育てができる層)を増やすことだと思います。もちろん、こうした政策が有効に働くためには、保育所の充実や医療の立て直しなども必要なのですが、より大きな目を持って経済政策を考えないと、これまでの「失政」の繰り返しになってしまうのではないかと思います。
 

2008年11月 4日 (火)

本日の「怒」081104/愚行を繰り返すのか、農林中金への資本注入


 未曾有の金融危機といわれる状況下で、金融機関への公的資金での援助が国会で議論されています。特に、資金運用に多角的なノウハウを持たない地方銀行の資産の劣化が危惧されており、地方経済の厳しい状況を鑑みると、ある程度の公的資金の投入はやむを得ないと思いますが、問題は農林中金と新銀行東京の扱いです。

*************引用/共同通信*************

農林中金の扱いなど焦点  金融法案修正で自・民協議

 自民、民主両党は、金融機関に公的資金を投入する政府の金融機能強化法改正案について4日から「農林中央金庫」と「新銀行東京」の扱いに焦点を絞った修正協議に入る。自民党は早期成立を目指すが、民主党は2金融機関の経営に問題があるとして資本注入に慎重。麻生太郎首相が衆院解散先送りを表明したことで対決姿勢を強めており、協議は難航する局面もありそうだ。
 民主党は農林中金に関し、資本注入前の国会承認を要求。新銀行東京については、改正法の対象外とするよう主張している。
 自民党は「2機関だけ狙い撃ちは法律論としておかしい」(国対幹部)と反発。自民党の園田博之政調会長代理は2日のNHK番組で、農林中金に関連して「傘下の農協に影響が及ばないよう(資本注入の)可能性を残しておくべきだ」と強調。新銀行東京を対象外とすることは「無理だ」と述べた。

************************************

 私は、民主党、特に小沢党首の政治姿勢については多くの疑義を持っていますが、今回の問題については民主党の主張に理があると思います。新銀行東京については「論外」ですが、農林中金についても公的資金を入れることは反対です。理由は、農林中金の貸し出し比率の低さです。「傘下の農協に影響が及ばないよう」との主張が農林中金への公的資金注入の大義名分になりそうですが、はたして農林中金にその価値があるのかどうかははなはだ疑問です。農林中金の昨年度の総資産は61兆強ですが、貸し出し残高は9兆8500億あまりです。つまり、総資産のうち15%しか貸し出されていないわけです。この貸し出しについても、内容を精査してみれば、政治的なものや不必要なものが多いのではないかと疑っています。

 貸し出し比率が小さい、ということは、実際に融資として役立っている金額が小さいことを意味します。同時に、劣化している資産の多くは貸し出し以外の投資によるものである、ということも意味します。貸出先がないために、主にドル建て(7割ほどと言われています)の外債などに投資し、結果的に資産を大きく傷つけることになったのです。このような金融機関に対して「農家の融資が滞るといけないから」という理由で公的資金を投入することには疑問を感じざるを得ません。

 思い起こしてみれば、政治がらみの融資や不明朗な資金が莫大にあるのではないかと言われた旧興銀、旧長銀、旧日債銀は、興銀が合併により、残りの二行が公的資金を使って資産を守った上で外資に「格安で」払い下げられて、噂された不明朗な資金移動が白日の下にさらされることはありませんでした。政治家や時の政策に左右される可能性が大きい金融機関こそ、内部の資金の流れを厳しくチェックする必要があるのですが、農林中金は情報の開示にもきわめて消極的です。4000万を超える理事長の報酬についても、当初は回答を渋っていました。こうした体質を温存できたのも、農林中金が「農水省の管轄」であることも一因です。

 農林中金への公的資金の投入を行なうことは、今までの悪しき体質をそのまま温存することにつながります。歴代の執行部や農水省の責任を明らかにすることなしに実行されれば、悪しき歴史が繰り返されるでしょう。農家への融資は、監査をしっかりした上で、各農協単位で援助を行なった方が良いのではないか、とも思います。

2008年10月29日 (水)

いくらなんでもこれはないだろう・・・環境問題はどこへ/政府・与党のご都合主義の極み


 今日の読売新聞のニュースには驚かされました。

*****引用*****************

休日の高速、千円で走り放題…ETC限定で政府・与党案

2008年10月29日(水)14時42分配信 読売新聞

 政府・与党が策定を進めている追加景気対策に盛り込む「生活対策」の柱として、休日に全国の高速道路を1回1000円の定額で走り放題とする新たな料金割引案を検討していることが29日明らかになった。
 ノンストップ自動料金収受システム(ETC)機器を装着している普通車が対象で、早ければ年内の実施を目指す。
 料金割引案は、土・日曜、祝日に高速道路に1回入れば、走行距離にかかわらず1000円(1000円を下回る距離は実額)の定額とする。首都高速や阪神高速などは除く見通しだ。家族のレジャーなどで高速道路を利用しやすくする観光振興の効果が期待され、家計への「お得感」を強調することで消費拡大の効果も狙う。
 政府・与党は必要な費用として約5000億円を充てることで最終調整しており、「生活対策」の目玉と位置づけたい考えだ。

**************************

 この春、ガソリンにかかる暫定税率が一ヶ月ほどゼロになったことは記憶に新しいでしょう。ねじれ国会の状況下、政府・与党は暫定税率の維持を訴え、野党は廃止を目指しました。当時の政府・与党の主張は「必要な道路が造れなくなったり、地方の財源が不足するだけでなく、ガソリンを値下げするということは、環境問題に対する意識が低いと国際的に非難される。サミットで環境問題を重視している我が国としては、ガソリンを安くしてどんどん使ってくれ、ということはできない」というものでした。いくつかの新聞は、政府・与党の主張通り、「環境問題のためにも暫定税率を維持すべき」と社説で論じました。

 今回の決定は、ガソリンの値下げ、ではなく「高速道路走り放題」です。長距離を走らせるとき、ガソリンが少々高かろうと平行する鉄道や航空路線より自動車の方が圧倒的に安くなる可能性が高くなります。これは、政府・与党がまさに否定していた「環境破壊」ではないのでしょうか? 選挙対策見え見えのこの政策、実現されれば政府・与党のデタラメさが際立つでしょう。春に環境問題を理由にして暫定税率の継続の論陣を張った新聞各紙は、当然非難の社説を書くのだろうと思って、楽しみにしています。

 

2008年10月14日 (火)

今必要な経済対策は/1・・・まずは現状分析から

 民主党の経済政策を「財源なきばらまき」として厳しく批判していた与党が、まるで民主党の政策に引き寄せられるように「ばらまき」型の景気対策を検討しているようです。新聞各社の報道によれば、公明党が主張している「定額減税」に加え、農家への個別保証、高速料金の大幅値下げ、公共事業の積み上げなど、伝わるものは、どれも財源の当てのない「選挙目当て」の政策ばかりです。小泉改革によって離反した自民党支持層を引き戻そうとする意図も大きいでしょうが、麻生内閣発足以来の世論調査の結果が思わしくない与党としては、なんとかして支持を取り戻そうとやっきになっています。自民党が非難したように、民主党の「公約」を実現するための財源ははなはだ心もとないものですが、与党の「対策」は財源の可能性すら明示できないもので、「赤字国債しかない」という自民党執行部の発言(朝日新聞)が、恐らく本音でしょう。兆単位の財源を確保するためには、今までになかったような思い切った行政の効率化や特別会計の全面的な見直しが必要です。民主党はその点に言及しているだけ、(実現可能性はともかくとして)自民党より「納税者寄り」だと言えるかもしれません。

 現在の危機的な経済状況でどのような政策が必要かを論ずることがとても大変なことだとはわかっていますが、少しだけ「素人の意見」を書いてみます。

 現時点での報道や専門家の論調を見ると、今回の金融バブルの崩壊があまりに劇的であったために、それ以前に実体経済が悪化していたことが忘れ去られてしまっているように思います。アメリカの景気後退と日本のそれが、「金融市場の混乱に端を発する」と同列に扱われることには、大きな疑問を感じます。アメリカの場合は、まさに「バブルの崩壊」という現象が当てはまるでしょう。実体経済から乖離したマネーゲームが国の富を増やしたかのような錯覚を生み、そのマネーゲームの裏の主役のひとつとして登場したサブプライム・ローンの崩壊が、マネーゲーム全体をぶちこわすことになりました。あらゆる債権を証券化して実体が見えない金融商品が量産され、それでも欲望を満たされない資金は、将来の需給関係がタイトになると予想される石油や穀物の相場に向かい、実需からかけ離れた価格に暴騰したこれらの「資源」は、実体経済に大きなダメージを与えたのです。「みんなが金持ちになるバスに乗れると錯覚していた」経済の崩壊だと言えるでしょう。

 これに対して日本の場合は、「国内経済を空洞化させたことによる景気後退が主因」であると言えます。政府の景気判断によれば、景気後退が始まったのは08年の2、3月ですが、景気を実感している人たちの統計では、昨年の夏にはすでに景気の減速が感じられた結果が出ています。景気動向を示す数値がなかなか下に向かわなかったのは、ごく一部の企業業績が「異常に」良かったことが原因であって、実際には国民の購買力は昨年の春以降、下がる一方であったというのが本当のところなのだと思います。派遣業法の改正で最低の生活すらおくれない非正規雇用に苦しむ人たちが大量に生産され、勤労者の所得水準が大きく落ち込みました。企業は非正規雇用で代替できるという「脅し」を手に入れて、正規労働者の賃金も押さえ込まれて/労働時間が長くなって、います。一方、昨年まで3年間で「特別減税」という名前で定着していた「定額減税」「定率減税」が廃止されました。国民健康保険の保険料などの負担も増大しました。給与所得者だけでなく、自営業/自由業者も広範囲に税・保険料の負担が増えたのです。もちろん、金融市場はアメリカ同様に自由化されて、年収が億を超える「労働者」も急激に増加しました。こうした社会的格差を育てた小泉路線によって、「勝ち組」以外の購買力はどんどん下がって来たのです。

 業績が急速に良くなった企業は、こうして購買力を失いかけている国内の市場に見切りを付け、これまで以上に輸出依存が高くなりました。さらに、業績向上によって溜め込まれた資金は、国内消費のための設備投資に向かうことなく、国際競争力がある分野へ集中的に向けられるか、海外への直接投資に向かうようになりました。そのために、アメリカ発の金融バブル崩壊(が始まった時点/2007年下半期)が招いたドル安/ユーロ安(07年暮れのドルの水準である117から120円には、08年には一度も到達していない)は、輸出に依存している企業への直接的な痛手になりました。その段階になって、政府はようやく景気判断を転換させたのです。

 ワーキング・プアと呼ばれる層の増加は、国力を著しく削いでしまいます。購買力がない層の増加、という直接的な景気後退要因だけでなく、働けなくなった後のゆとりのなさは社会保障関連費の支出を増大させます。結婚もできない、ましてや子どもを育てることなど全く不可能な若年層が増大することは、単に「負け組」が増えるという社会現象を生むだけでなく、社会全体が萎縮する状況を生み出します。少子化の問題は、保育所を増やすだけでは解決しません。子育てができる経済的/精神的な「ゆとり」を作ることが必要なのです。これまでの政策、特に小泉路線が取ってきた方法論は、全く正反対のものだと言えるでしょう。

 もうひとつ、「お金がどこに向かうのか」ということについて考えてみましょう。先週末にRietの大手が倒産しました。「証券化」という言葉が流行り出したのは、ほぼ10年前のことですが、「リスクを分散して安全性を高める」「小口の投資が可能になり資金を引きつけやすい」という謳い文句で、さまざまな債券や財産が証券化されてきました。もちろん、証券化商品にはそのような特徴があり、投資家が「専門家の判断で投資しやすい」ものでした。しかし、裏を返せば「ブラックボックス」が大きくなった商品が増えた、ということでもあります。さらに、私には大きな疑問があります。「投資しやすい金融商品」とは何故作られているのでしょうか。投資が増えて実体経済に好影響があれば解りやすいのですが、「投資のための投資商品」とは、すなわちお金の動きだけで「儲かる」ことを目指したものに他なりません。FXなどがもてはやされていますが、こうした「富を増やさないやりとりで儲けるもの」には、表と裏があることを知る必要があるでしょう。実体経済を反映しないこうした商品に踊らされた経済は、いずれ破綻がくるのではないかと思います。

 次回は、実体経済の状態をもう少し見てみたいと思います。

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