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2009年7月 4日 (土)

本日の「怒」090704/当選を単純に喜ぶわけにはいくまい/IAEA事務局長選挙の真実

 3月の選挙で当選者がでなかったIAEAの事務局長を選ぶやり直し選挙で、ウィーンの政府代表部の天本之弥氏が当選しました。当ブログでは、3月28日のエントリー(本日の「怒」090328/IAEA事務局長選挙の「当然の結果」)で天本氏が信任票を集められなかった結果を、日本の外交が核廃絶に対して何も努力して来なかった当然の結果であることを指摘しました。今回の選挙でも、天本氏は当選したとはいえ、前回選挙の得票を一票も伸ばすことはできず、一カ国が棄権したために当選ラインが下がって当選するという、実に「お粗末な」結果となりました。

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IAEA事務局長に天野氏 先進国と途上国 深い溝浮き彫り
2009年7月4日東京新聞朝刊
 【ウィーン=弓削雅人】国際原子力機関(IAEA)は三日、ウィーンの本部で理事会を開き、次期事務局長に日本の天野之弥ウィーン国際機関代表部大使(62)を任命した。九月の年次総会で正式承認される。天野氏は理事会後の記者会見で先進国と途上国との関係に触れ「どの国、地域での意見も反映させて運営していく」と、結束して課題に取り組む姿勢を示した。
 二日の特別理事会では、信任投票にもつれ込んだ末、棄権票が一つ出て当選ラインが下がったことで天野氏は必要な支持数ぎりぎりで選ばれた。秘密投票だったため棄権に回った理事国は定かでないが、日本側は天野氏をはじめ、東京や理事国駐在の外交官もぎりぎりまで懸命の働き掛けを続けた。明確な信任表明でなくても棄権は天野氏に有利に働くことになり、まさにこの一票が勝敗の分かれ目となった。
 問題は、前回選挙も含め、当初から最有力の天野氏が苦しんだ背景。外交筋は、天野氏が当選すれば先進国に有利で途上国への配慮を欠いた運営を主導する、との懸念を途上国が持っていると指摘。IAEA内にある先進国との間の溝は容易には埋まりそうにない。
 IAEAは核燃料の安定供給と核濃縮技術の拡散防止を目的に供給保証のシステムを議論している。原発に使う低濃縮ウランを備蓄して市場価格で供給する国際管理の仕組みだが、途上国に対し原子力技術の新たな取得を制限し先進国が独占しようとするものとの反発もある。北朝鮮やイランの核開発問題に加え、途上国の先進国への不信感解消も天野氏にとって課題となる。
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 日本政府や多くの政治家の「核廃絶」への思いが嘘っぱちであることは、7月1日付のエントリー(「言論の自由のはき違えと核廃絶の嘘」)でも取り上げたように、自民党の主要な政治家や民主党の一部議員が、核武装を旨とする団体と強く連携していることでも明らかです。こうした事実は、アメリカの核政策に盲目的に追従してきた日本外交とともに、多くの途上国に不信感を与えています。再投票でも支持が増えなかった結果は、「当選したことが日本外交の勝利」ではなく、「どうやっても不信感を拭えない日本外交の惨めさ」を物語るものです。

 産経、読売の社説は、「北朝鮮、イランの核問題」と「温暖化防止に向けた原子力の平和利用の重要さ」に力点がありました。

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【主張】核の番人 不拡散に強力な指導力を(産経新聞)

 国際原子力機関(IAEA、本部・ウィーン)の次期事務局長(任期4年)に、ウィーン国際機関日本政府代表部大使の天野之弥(ゆきや)氏が選出された。エルバラダイ現事務局長の後を継ぎ、12月に就任する。
 IAEAは原子力の平和利用促進と軍事転用防止を担う。「核の番人」と呼ばれる重要な国際機関のトップにアジアから初めて、唯一の被爆国である日本から原子力・軍縮を専門とする外交官が選ばれた意義は大きい。
 IAEAは1957年に発足した。当初52だった加盟国は現在146を数える。事務局長の下に核不拡散を担当する保障措置局など6局が置かれ、2300人のスタッフを擁する専門家集団だ。しかし、核物質の軍事転用に目を光らせ、核拡散を防ぐ保障措置協定には強制力が欠ける。組織の予算や人員も十分とはいえない。
 核拡散防止条約(NPT)運用検討会議第1回準備委員会議長を務めた天野氏には、そうした核の番人の弱点を改善し、機能や能力を強化する役割を期待したい。
 決着をみなかった3月の事務局長選のやり直しとなった今回の再選挙でも、天野氏は規定による投票繰り返しの末に選ばれた。ぎりぎり当選の背景には、すでに原子力技術を持ち、核不拡散を重視する先進国と、原子力利用の制限を嫌う途上国の反目がある。
 IAEAにとって継続中の難題は、北朝鮮とイランだ。
 北朝鮮は5月に2度目の核実験を行っただけでなく、使用済み核燃料棒再処理やウラン濃縮の着手まで表明した。核施設の無能力化作業を監視していたIAEA要員は4月に退去させられたままだ。核兵器の開発疑惑がもたれるイランは「核平和利用の権利」を主張してウラン濃縮を続けている。
 むろん、米英仏中露の核保有5大国の間にも意見の違いがある。とくにイランに関しては、「平和利用ならば」と理解を示す途上国もある。IAEAのかじ取りは一筋縄ではいかない。
 一方、石油資源の枯渇が視野に入ってきた今、地球温暖化対策と相まって原子力エネルギーへの期待が高まっている。戦後一貫して平和利用に徹し、原発と核燃料サイクル事業に実績を持つ日本の代表として、天野氏には存在感を示してほしい。一部に聞こえる「指導力に欠ける」との批判をはね返す実行力も時には必要だ。
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 これに対し、東京新聞の社説は事情をやや正確に解説しています。

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天野事務局長 被爆国の願いを世界へ(東京新聞社説)

 「核の番人」と呼ばれる国際原子力機関(IAEA)の次期事務局長に初めて日本人が選ばれた。核兵器と関連技術の拡散を防ぎ、同時に原子力の平和利用を促進する強い指導力を期待する。
 当選したのはウィーン国際機関代表部の天野之弥大使。外務省で軍縮、核不拡散、原子力部門を歩んできた。十二月に就任する。
 ウィーンを舞台とした選挙戦では「広島、長崎を経験した日本から来た」と語り、日本は核の平和利用という政策を一貫して進めた「模範的な国だ」と訴えた。
 日本には長い歴史を持つ反核運動がある。政府も過去十五年間、国連総会で核廃絶決議案を提出してきた。唯一の被爆国からの事務局長選出だ。日本が進めてきた核不拡散と原子力の平和利用を両立する政策を、国際社会でさらに具体化させたい。
 オバマ米大統領が四月、プラハで「核なき世界」演説をし、米国とロシアが戦略兵器削減交渉を開始するなど核軍縮の動きが出てきた。しかしIAEAの現状を見ると、難問が山積している。
 イランは国連安保理やIAEAの要求を拒否して、ウラン濃縮活動を続けている。大統領選による混乱を受けて、次期政権は国内を結束させるためさらに対外強硬姿勢を強めて、核開発を加速化させる恐れもある。
 北朝鮮は今年四月、寧辺の核施設を担当していたIAEA監視要員を国外退去させた。
 IAEA事務局長には両国の核問題で、米国やロシア、中国など関係国の関与を見極めながら対応する政治力も必要となる。
 深刻なのは核を持つ国と持たない国の格差、対立だ。
 核を保有する先進国は不拡散体制の強化を優先するが、途上国は平和利用が目的なら核技術を移転すべきだと主張する。六月のIAEA理事会では、原発燃料となる低濃縮ウランを安定供給する「核燃料バンク」の創設が議題となったが、途上国側は自国の原子力発電の道が閉ざされると反対した。
 天野氏は選挙戦の信任投票で、当選ラインにやっと届く薄氷の勝利だった。「日本は米国寄りすぎる」とみなして反対票を投じた途上国もあるといわれる。支持基盤は万全とはいえないようだ。
 先進国と途上国の対立をどう調整していくか、天野氏には核廃絶という日本国民の願いを念頭に指導力を発揮してもらいたい。
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 IAEAのエルバラダイ現事務局長がノーベル平和賞を受賞したのは、アメリカの主張に反して「イラクに核兵器開発の兆しがない」という主張を引き下げなかったことが大きなポイントでしょう。もちろん、ノーベル平和賞が政治的なものであることは前回のエントリーでも述べた通りですが、それでも特定の国家に肩入れしなかったことは評価されるべきでしょう。果たして天野氏にその気概と力量があるでしょうか。さらに、日本政府やアメリカなど、天野氏を積極的に推した国々が、途上国の不信感を取り去る方向へIAEAが向かうことを許すでしょうか。

 このエントリーを書いていたら、こんなニュースが飛び込んできました。

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「武器輸出3原則」の緩和、経団連が提言
 日本経団連が、武器や武器関連技術の輸出を原則的に禁じている「武器輸出3原則」の緩和を求める提言をまとめることが3日、明らかになった。

 日本企業が、外国との武器の共同開発に参加できるよう求める内容で、年末に改定される「防衛計画の大綱」に反映させるよう、政府に働きかける。
 提言は、「(武器の)開発初期段階から参画することが、最先端装備を早期に取得し、防衛力を強化するために最も有効な方策」と主張している。
 「北朝鮮による弾道ミサイル発射など、北東アジアの安全保障環境は緊迫化している」状況を踏まえたものだ。武器輸出3原則について、「一律の禁止ではなく、個々のケースについて適切に対応する必要がある」と主張している。
 レーダーで捕捉されにくいステルス戦闘機などの開発費は巨額で、欧米などでは複数の国が共同で行うのが主流だ。だが、日本は、軍事関連技術の輸出が伴うため参加できず、最新鋭機の導入時期が遅れるケースも懸念されるという。また、国内では、防衛予算減で、軍事産業から撤退する企業が相次いでおり、新たなビジネス機会を求める産業界の意向も反映されている。
 武器輸出3原則を巡っては、自民党の防衛政策検討小委員会も6月に同様の提言をまとめている。
(2009年7月4日09時24分  読売新聞)
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 まさか、「通常兵器を進化させることが核廃絶につながる」などとは言わないでしょうね。経団連は、派遣切りと脱法行為のボスが会長になって以来、「正気か?」と思わせる発言が増えていますが、天野氏の当選と同じ日にこうした記事がでるところなど、この国のお粗末さを物語っているようで哀しくなります。

 広島・長崎の犠牲者が安らかに眠れる日が来ることがあるのでしょうか。

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コメント

はじめまして♪TBおくらせてもらいます。経団連の武器輸出緩和なんてニュースには驚きです。やっぱりロスチャイルドグループにはいろうとしているのでしょうか。

>あずーるさん

 はじめまして。

 ロスチャイルドに取り入ろうというような「大それた」ことは考えていないのじゃないかと思います(苦笑)。兵器産業は「ぬれ手で粟」の世界ですから、参入したい、規制を撤廃して欲しい、というのは「まっとうな経済人」(苦笑)なら、当然考えるでしょうね。

 ブログも拝見させていただきたいと思います。また、是非、お越し下さいませ。

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