« 本日の「怒」090107/これは民族浄化ではないのか | トップページ | 本日の「怒」090109/今度は正社員の給与削減を狙う・・御手洗経団連会長の真意 »

2009年1月 8日 (木)

日本の取るべき進路について3/きちんと「懲り」ましょうよ/政府の役割その1「歴史」


 レーガン政権以来の方向に、「小さな政府」というものがあります。「その割に、アメリカはあちこちで軍事費をばらまいているぞ」という指摘はありますが、基本的には「民間に任せられるものは任せる」ということと、「政府は市民生活にできるだけ介入しない」ことがその本旨です。この基本と、「経済の活力は市場をできるだけ自由に振る舞わせることで生まれる」という発想が組み合わさると、直近30年の政策が理解できます。基本的な二つについて論じてみます。

1)所得税、法人税の減税

 政府ができるだけ経済活動に介入しない、という原則を守るためには、所得の再配分効果を減少させる必要があります。所得税は累進課税になっているので、高額所得者ほど税率が高くなっています。そのために、80年代からは、最高税率の引き下げが最大の政治テーマになり、85年に70%だった税率が2007年には40%まで下がりました。年収1億の人の手取りは、3000万から6000万に増えたわけですね。一方で、歳入を確保するために、88年に消費税が導入されました。結果として、低所得者層の税負担率が大幅に上がり、所得の再配分効果を薄める目的は達成されました。

 国際競争力をつけ、大企業の体力をより充実させるために、1980年台に42%だった法人税も、2000年からは30%まで段階的に引き下げられました。日本の産業基盤や雇用を支えて来た中小企業は、その多くが赤字であり、法人税の切り下げはコンスタントに利益を上げられる大企業の税負担を軽くするために行なわれました。規制緩和などの諸政策の効果とも相まって、一流と言われる大企業は莫大な利益を上げられるようになりました。

2)中曽根民活から郵政民営化まで/行政の「スリム化」の本質

 中曽根政権は、外交面では(ブッシュの忠犬となった小泉首相と同様)アメリカのレーガン大統領との「個人的な友好関係」を軸に、「日本はアメリカの不沈空母」「有事には太平洋につながる海峡を封鎖する(アメリカのためにソ連や中国の艦隊を日本と大陸の海峡で押しとどめる)」などの従米路線をとり、国内でも軍事費のGNP1%枠の撤廃などの「軍事大国化」を目指したことで名を残しています。経済でもアメリカに追従することに熱心で、円高に理解を示し「アメリカ製品を買おう」というキャンペーンを行ないました。こうした中曽根政権がアメリカ流の経済に「憧れる」のは必然で、小さな政府を目指した各種の施策が実行されたのです。ひとつは前項に上げた税体系の調整、そして「民活」です。

 民活は、「民間の活力を導入する」という名目での政府の役割の放棄、政商への国家財産の切り売り、地方公共団体の活動への民間関与を増やすこと、などがその柱でした。実際に行なわれたことは、

① 国鉄分割民営化
 膨大にふくれあがった国鉄債務を解消するため、と称して、国鉄が分割、民営化されました。借金は国民の税金で肩代わりし、さらに不採算会社には収益を保障するシステムを作り、不採算路線の廃止/第三セクターへの移譲などが行なわれました。結果として、借金がさらに増え、地方の足が奪われ、国鉄がJRとなって安全軽視、収益優先の体質を強化したのです。民営化したとはいえ、政治家が関与する道はしっかり温存し、現在でも住民の足を剥奪しながら新幹線の延伸が続いています。
② 民活、国有地の払い下げ
 国有地を民間の力で有効に利用する、という目的で、さまざまな土地が払い下げられました。現在も明かりがつかない高層マンション(新大久保と高田の馬場の間で見ることができます)や汐留地区など、払い下げた民間企業に莫大な利益をもたらしました。
③ 第三セクターという新たなる利権構造の創出
 第三セクターということばがブームになったのもこのころです。行政が行なっていた各種の事業を、いわば「半官半民」の組織で行なうようにしたものです。各地にホールや施設が乱立したのもこの時期で、その多くは「行政ではない」という名目で行なわれました。もちろんこうしたハコものにつきものの利権構造はそのまま温存、強化されたのです。第三セクターの多くは、行政からの天下りと出向した職員が責任者を務め、行政の非効率はそのまま持ち込まれました。
④ 各種の民営化
 専売公社や電電公社が民営化されたのも、中曽根政権の結果です。こうした「民営化」は、行政の効率化の象徴としてもてはやされました。たしかに、競争が激化して電話料金は下がりましたが、弱者にとっては使い勝手が悪くなり、さらに国民から集めた4兆円にも上る電話債権は、NTTへのプレゼントとして紙屑化したのです。

などです。

 こうした手法を正当化するために、中曽根内閣は「審議会」などを乱立させました。「土光臨調」と呼ばれた第二次臨時行政調査会は中曽根内閣より前の鈴木内閣時代に作られたものですが、「朝食はメザシ」などと語って国民に支持された土光臨調のこの方法を拡大し、さまざまな組織が作られたのです。そこには、東大の佐藤誠三郎教養学部教授(当時)などのブレーンを使い、あたかも「民間の意見」であるかのようにして政策を推し進めました。

 小泉政権も、新保守主義・新自由主義に立脚している点で中曽根政権と性格を同じくします。ブッシュ大統領との個人的な交友関係をひけらかしてアメリカ追随の政策を次々に打ち出したところも、中曽根政権とよく似ています。小泉元首相が郵政民営化を錦の御旗に掲げたのは、こうした思想的背景だけでなく彼が若い頃にレクチャーを受けた当時の大蔵省の意向が強く働いているのですが、その方向性はすでに中曽根政権で実体化されたものと同じです。郵政民営化が、弱者を切り捨て、効率を優先した経営を求める「郵便局」に衣替えしたことは、国鉄の民営化と全く同じ方向性だといえるでしょう。

 行政を「スリム化する」という名目は、こうした大掛かりな政策で実現したかのように見えますが、実態は何も変わっていません。税金で造られる道路は、整備する必要がある部分が減少するにつれて、利権確保のために「道の駅」や各種のハコものに税金を投入するシステムが作られていきました。官僚組織はむしろ肥大し、第三セクターや公益法人を乱立させることで、末端の公務員までを巻き込んだ天下り機構が完成したのです。結果として、利用率が上がらない赤字を抱えたハコものが地方財政を圧迫し、道の駅などの施設が地場のドライブインなどの経営を破綻させています。

3)金融面での規制緩和

 金融面での規制緩和は多岐にわたります。大きく分類すると

① 業態間の垣根を取り払うこと
② 国内・国外での資金移動の障害をなくすこと
③ 金融商品の多様化を認めること
④ 金融会社の形態の多様化を認めること

になります。日本では90年代後半からこうした施策が次々と行なわれてきました。

 こうした規制緩和の目的は、基本的に金融企業が自由に振る舞える土壌を作ることです。そうした意味で、まさにレーガン政権以来の方向に合致したもので、結果として何が起こったかは、すでに皆さんもよーくご存知の通りです。

4)各種の規制緩和

 これも、お手本はアメリカにあります。ある程度の年代の人なら、アメリカの航空会社と言えば「パンナム」でしたが、規制緩和による格安航空会社の参入などの影響で、91年にはその歴史を閉じています。また、カリフォルニアの大停電を記憶している方も多いでしょうが、これも規制緩和によって電力自由化が起こり、収益優先でセイフティーネットを疎かにしたつけでした。

 日本で行なわれて来た規制緩和の主なものは、次の通りです。

① 労働形態の規制緩和
 いわゆる派遣の問題に代表される歪みを生じたものです。企業が労働者を「在庫」のように調整できるようにすることが目的で、結果としてワーキング・プアの続出、さらに失業者の極大化を生みました。
② 特定産業に対する規制緩和
 タクシーの台数制限の撤廃、運輸業への参入規制の緩和、酒類販売免許などへの制限の緩和、電力事業者への参入規制緩和、郵便事業への参入に対する規制緩和、農業事業者への株式会社の参入、など、多岐にわたります。
③ 行政サービスや検査の民間移譲など
 耐震偽装問題で一般に知られるようになった建築基準検査機関の民間委託などがこれにあたります。

 もちろん、規制緩和には功罪両面があります(その点は次回)が、功ばかりが喧伝されて無秩序に行なわれて来たために、さまざまな歪みが出ているのです。

 次回は、こうした「行政のスリム化」の意味を考えてみます。

« 本日の「怒」090107/これは民族浄化ではないのか | トップページ | 本日の「怒」090109/今度は正社員の給与削減を狙う・・御手洗経団連会長の真意 »

政治」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

« 本日の「怒」090107/これは民族浄化ではないのか | トップページ | 本日の「怒」090109/今度は正社員の給与削減を狙う・・御手洗経団連会長の真意 »

無料ブログはココログ
2018年10月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31      

最近のトラックバック