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2008年9月30日 (火)

最後は「世襲」で幕。小泉劇場の終演/小泉政権のやったこと1

 小泉元首相が、政界の引退を表明しました。いまだに国民の間に人気がある小泉氏ですが、「自民党をぶっ壊す」と高らかに宣言した割には、自民党の政権維持の命脈でもある「地盤/看板」をそっくり息子に世襲するという、もっとも古くさい自民党らしさをはっきりさせて引退しました。もともと明確な政治的主張がある訳ではない小泉氏らしい、お粗末な幕切れです。今回は、小泉政権が何をしたのかを考えてみましょう。何回になるか・・・

【1】郵政民営化とは一体なんだったのか/郵政民営化と道路公団の「解体」

 小泉政権の本質が郵政民営化にあるわけではありませんが、やはりここから手を付けていくべきでしょう。民営化されたもの、国鉄、電電公社、道路、郵政について考えてみましょう。

 これまで民営化や事業の民間化に熱心だった自民党の首相は、中曽根、小泉の両元首相です。どちらもアジテーターとしての能力は高く、政権の支持率もかなりのものでした。しかし、民営化は一つとして成功していないといえます。山手線新大久保駅と高田の馬場駅の中間には、中曽根政権の「民活」がどんなものだったかをはっきりと示す、廃墟のように明かりがともらない再開発された高層マンションがそびえ立っています。国鉄の民営化は、地方を荒廃させ安全を無視する風潮を生んで大きな犠牲を出しました。NTTは、国民の4兆円を超える財産を帳消しにして儲け優先の体質を生み出し、弱者や地方の犠牲の上に持てるもののためのサービスを優先する企業の論理を盤石なものにしたのです。そして、道路、郵政です。

「民活」(もう死語かもしれませんね・・・ご存じない方も多いかと。民間活力導入、ようするに「民営化/払い下げ」などを推進する時に錦の御旗に使われた言葉です)という言葉を聞くと、明治以来の黒い癒着構造を思い浮かべるのは私だけでしょうか。国民の財産を格安で払い下げて財閥の基礎を作った明治政権同様、「民活」「民営化」がどのような意図で行なわれたのかということは、歴史の検証が必要です。もちろん、明治時代の「払い下げ」が資本を蓄えて日本の発展の礎を作った、という議論もありますが、負の側面もきちんと考える必要があると思います。上記の4つの「民営化」を、簡単に振り返ってみましょう。

(1)国鉄

 国鉄の分割民営化を肯定的に捉えている方は多いようです。いわく、「赤字体質から脱却できた」「サービスが良くなった」「生産性が上がった」などがその主張ですが、そのまま素直に信じて良いものでしょうか?

 国鉄が分割民営化されるまで、国鉄が目のくらむような額の借金を抱えていることが盛んに報道されていました。その額は、分割民営化された当時、約37兆円ほどありました。分割民営化によって、そのうちの約14兆円をJRが負担し、残りの約23兆円を国の債務(要するに税金で返すということ)にすることに決まりました。当然、分割民営化されたJRの負担は大幅に減りました。家計に有利子負債が370万円あった状態が、突然140万円に減らされた、と考えて下さい。生活は楽になるはずですね。そもそも国鉄が赤字に喘いでいた原因は、国策にあります。戦後、引揚者の就職のために大量に人員を増加し、1960年代からは、採算を全く考えない路線の拡張が続きました。こうしたことが国鉄の赤字体質を作ったのです。

 では、国鉄の解体は何を目的に行なわれたのでしょうか。いちばん大きな理由は、労働組合の解体です。国鉄の中には多くの労働組合があり、一部はかなり戦闘的でした。しかし、国鉄の労組が戦闘的になっていった理由のひとつは、実は「国鉄の職員が労働者として認められていなかった」ことが原因です。日本では、警察官や自衛官、一般の官僚(役人)ではない「現業公務員」も、労働基本権が制限されていました。ILOなどの国際機関からは幾度となく是正を求められていたのですが、「公共の福祉」という名目の元で、不当な労働基本権の制限が行なわれていたのです。結果的に、「違法スト」を行なわざるを得ないことになり、違法ストと処分のいたちごっこが続いていました。こうした「過激な」労組を解体することが、国鉄の民営化の大きな目的だったのです。そのことは、民営化したJRが特定の労組の組合員を集中的に採用拒否したことでもわかります。しかし、「赤字をなんとかしなくてはならない」という名目が叫ばれ、国民は「分割民営化すれば黒字になる」というストーリーを信じ込まされたのです。

 さて、旧国鉄の債務はどうなったのでしょう。分割されて借金を減らされ身軽になったJR東西、東海の3社は、分割後の2年間で約2兆円の借金を返済しています。一方で、この間に政府が負担する(税金ですね)分は、22兆から28兆円へと増えています。そして、結果的には16兆円を国の一般会計の債務とし、4兆円ほどが年金などの費用として清算事業団、厚生年金などのJR拠出で、残りは「免除」となったのです(要するに、国が負担したことと同じ)。なぜこのように膨大な国庫負担が生じたのかという問題も、実は民営化に伴う「黒い」部分です。地価が高騰している間は「地価高騰を促進するから」という理由で旧国鉄の財産の処分が引き延ばされ、結果的に優良物件がかなり安く払い下げられることになりました。国鉄の債務を国民が負担する一方で、財産は(例えば汐留のように)安く処分されたのです。

 さて、身軽になったJRは、不採算路線の廃止や人員整理、実質的な値上げ(優等列車の格上げなど)で、本州三社が黒字体質になりました。人員配置の「効率化」は徹底しており、ターミナルでの駅員配置も大きく変化しました。結果として、安全確認が十分にできずに「ひやっとする」ことがとても増えたと言われています。私も、上野駅でお年寄りが降車していないのに扉を閉められてしまった現場に遭遇したことがありますが、儲け主義、安全の軽視、その後に痛ましい重大事故を引き起こしていまったことは、皆さんもよくご存知でしょう。

 要するに、国鉄民営化の「成功」とは、「借金を税金で棒引き」「地方のかけがえのない足である不採算路線の廃止」「安全を軽視した合理化と儲け主義」に他ならないのです。

(2)電電公社

 旧電電公社が民営化され、電話(通信)会社が複数の競争関係になったために、電話料金が下がりサービスが良くなった、とされている民営化ですが、これも額面通り受け取って良いのでしょうか? NTT東西は、競争力強化のため、光ファイバーに対して毎年2000億以上の投資を行なってきました。一方で、104は10倍に値上げされ、公衆電話は次々と撤去されていきました。「携帯電話が普及したので公衆電話は不要」「インターネットで調べられるのだから、104も不要」という意見をよく見受けますが、携帯電話やインターネットが使えない人たちのことは忘れ去られています。

 NTTが民営化されて競争が正常に行なわれ利用者の利益に貢献した、という単純な議論には、上記以外にも反例があります。有名なのは、ADSLが導入されたときのNTTの妨害工作でしょう。当時、ISDNを看板にしていたNTTは、速度が速くてアナログ回線でもすぐに始められるADSLの普及を恐れていました。ISDN→光、という展開を考えていたNTTにとっては、ADSLの利便性が認知されて普及することを恐れたのです。そのために、回線速度のデータなどを「偽装」してまで、ADSLへの妨害を行ないました。(詳しく知りたい方は、「東京メタリック通信」などで検索されると情報がでてきます。)競争が利用者のためにならず、むしろ収益を上げるために利用者の利便性を無視するNTTの体質がよく表されている問題です。

 もう一点、旧電話債権のことです。ある時期まで、電話を引くためには1回線あたり72000円の「権利金(電話加入権)」が必要でした。これは、まだインフラが整っていない時代に、電話を引くための費用を捻出するために作られたものです。そして、この回線「費用」は、財産として譲渡できるものでした。ところが、競争が激しくなり、携帯電話などが普及すると、電話回線の使用料とも言うべき「加入権」ですが、現在は新たに電話を引く時に必要ありません。一昔前まで、この加入権は売買ができたのですが、すでに市場は崩壊しています。それもそのはずで、国民から集めたこの加入権は、完全に無価値なものになろうとしているのです。総額にして約4兆円。この莫大な資金が、NTTへただ同然で与えられてしまったのです。加入権についてはさまざまな議論がありますが、どのように正当化しようが、国民を欺いて財産を取り上げたことには違いないのです。

 国鉄と異なり、電話/通信業界には他社の参入がありましたので、競争原理が働いて向上した部分もかなりあることはたしかです。しかし、その裏で犠牲になっているものがあることは、国鉄と同じ構造です。そして、分割される前の電電公社の労働組合は「全逓」で、やはり強力な組合運動を展開していました。分割/民営化の真の目的が何であったのか、勘ぐってしまうのは私だけでしょうか?

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